さて、後編はいよいよ旅の目的であったダラスでの大会と来期のプレー先選定に関わる交渉活動のレポートです。まず、今回参加した大会名は、“11th P.O.I.N.TExtravaganza”というイベントで、簡単に説明すると年に一度ダラスで開催される障害者関連のサマーイベントです。内容はバスケの3on3大会をはじめ、水上スキー、釣り、乗馬、射撃、ロッククライミング等の体験や福祉機器展示、各種ゲームなど盛りだくさんです。しかも、参加費を15ドル支払えば、全てのイベントに無料で参加・体験が出来るほか、会場となったダラスのバックマン レクリエーションセンターでは飲み物や食べ物も全て無料で振舞われていました。本当は神保も参加費15$を支払うのですが、「このイベントに参加するために、わざわざ日本から来たんだよ!」と言ったら無料にしてくれました。ちなみに安はスタッフに言われるまま15$の参加費を支払ったそうです。(笑) そして、そのイベントの一つとしてデビッド・カイリー主催の3on3の大会があったのです。また、この大会のオフィシャルスポンサーは、米国車椅子メーカーのクイッキー社でした。しかも、イベント全体のスポンサーにはアメリカン航空をはじめ数十社の企業がサポートしており、そのスポンサーからのスゴイ数の商品等が提供されていました。例えば航空券や旅行券、釣り道具に車椅子、賞金(お金)などがクジ引きや大会の商品で出ていました。
釣りブースにてナマズを釣り上げました
水上スキーブースを遠めで撮影
全米代表選手ウィルとのツーショット
それでは大会の概要について説明しましょう。まず、デビッド・カイリーに招待された48名の選手のみが出場を許される大会で、クイッキーのサポートを受けるパトリック・アンダーソンをはじめとするアメリカ、カナダの代表選手も多数参加していました。他にもD1で活躍する上位チームの選手が中心に招待を受けているのが特徴です。安については神保の売り込み作戦と参加を辞退した数選手の代わりに、彼の参加を認めてもらうことが出来たのでした。チームの構成は、まず主催者に決められた16人のキャプテン(神保もキャプテンに指名された)が、残りの32人をドラフト方式で一人ずつ引き抜いていくという方式だったのですが、時間の関係から神保がキャプテンミーティングに参加した木曜日の夜には既にチーム編成が決められていました。神保のチームメイトはジョシュ選手(写真右)とヘイスー選手(写真左)でした。ちなみにジョシュは現在22歳で全米のジュニア代表選手です。また、現在イタリアのプロチームから誘いを受けており、来季はそこでプレーする予定だそうです。彼が言うには「イタリアのチームからは車、アパート、給料がサポートされるので、アメリカでプレーするよりも条件が良い」らしいです。彼とは2シーズン前に数回試合をした経験もある知り合いでしたが、一段と上手くなっておりました。ヘイスーは地元ダラスのD2でプレーをしているメキシコの選手ですが、スピードがあるガードなのでバランスの良いチーム編成となりました。ちなみに安のチームは元全米代表のガードとビックセンター(共にD1選手)のチームで、これまたバランスがいいチームでした。
神保チーム3人で記念撮影
次にルールの説明ですが16チームをA.Bリーグに分けて、初日(金曜日)に予選リーグ各7試合のリーグ戦が開催されました。ルールを簡単に説明すると、15ポイント先取方式で最長ゲーム時間は25分間。得点は1ゴール1点で、3Pシュートは2点、シュートクロックは25秒でした。また、ファールは選手の申告制というテキトウな試合ですが、ハイレベルな選手が多いせいか?意外と紳士的に進んでいたと思います。ちなみに神保も安も同じBリーグだったのですが、直接対決の結果は僅差ですが神保チームの勝利でした。初日の結果は4勝3敗同志で神保チーム(B組3位)、安チーム(B組4位)は翌日の決勝トーナメントに進出でした。ここで特筆したいのが安の活躍でした。最初は言葉が通じないのと安の実力を知らない関係で、彼にボールが回っていなかったのですが、時間が経つにつれてパスが回るようになり、最後は安がチームの得点を一番稼いでいました。しかも、物怖じすることなく国際クラスの選手にバリバリ仕掛けている姿は日本人選手らしからぬ光景でした。周囲の選手からも評判は上々で、安選手の可能性の大きさを感じました。ただし、D1では必要としてくれるチームが一つとして無かったことも事実で、いかにD1が選手にとって狭き門かと言うことも思い知ったのではないでしょうか?翌日の決勝ラウンド神保チームはA組2位のチームと戦ったのですが、ここには世界ナンバーワン選手と言われるパトリック・アンダーソン選手がおり、11−9まではリードしていたのですが、その後パットに2点シュート(スリーポイント)を4本中3決もめられて撃沈されました。安チームもA組1位のデビッド・カイリーチームに撃沈されて共に決勝トーナメント1回戦で敗退でした。結局優勝を飾ったのは神保チームを破ったパットのチームで、優勝チームの3人にはクイッキー社よりバスケ車を各1台と優勝賞金が出ておりました。まあ、筋書き通りと言う感じがしないでもないけどなー。
決勝戦の様子
この大会期間中に色々なチームの選手、関係者と来期のチーム体制などに探りを入れつつ、自分のプレー先を考えたのですが、これが非常に難しいのです。というのも、殆どの選手は常時数チームと交渉をしているため、何処のチームに聞いても「多分○○はうちのチームに来るよ!」と、同じ人間について話しているのです。ということで水面下では各チーム同士の綱引きが行われているようで、来期のチーム体制については最後の最後までわからないといった感じです。ちなみにパットは昨シーズン優勝したミルウォーキー・バックスが本命、ウィルはバックスからカリフォルニアのゴールデンステートに移籍予定で、相変わらず米国のD1は移籍組みが多いこと。神保も現在4チームと交渉をしているのですが、その中でも一応チーム状況(実力、経済状態)や環境を総合して2チームに絞り込んで具体的な話し合いをしました。ある1チームはチームマネージャーと直接話をしたのですが、「万全の状況で受け入れる準備がある」という言葉があり、結構現実味が出てきた感じです。現在メールで詳細を確認中なので7月末までには決定したいと思っています。そして、夏のゴールドカップに日本のサポーターとして北九州へ応援に行った後、再渡米をしようかと思っています。この件は決まったら、またこの場で詳しく書こうと思っています。
そうそう、それからこの旅行の余談として、最終日に安とアメ人の友達と3人でメジャーリーグを観に行ったときの話しです。テキサス・レンジャース対カンサスシティー・ロイヤルズだったのですが、いつもの通り一番安い外野席のチケットを6ドルで購入してから、係員の目を盗んで少しずつ下の階に移動をしました。(笑)そして、野球観戦をしながら一番日焼けが出来そうな1階席のエリアを見つけてたどり着いたときのことです。丁度カンザス側のブルペンを見ると何やらアジア人らしき人がいるではないですか。後姿を確認すると「SUZUKI」と書いてあるのです。そう、彼こそマック鈴木投手でした。最近有名な日本人選手がたくさん海外進出を果たしている関係で影が薄くなりましたが、マックはあの野茂投手よりも先にメジャー挑戦したチャレンジャーなのです。だから神保は以前から結構マックのファンでした。そこで、即行売店に行ってサイン用ボールとマジックペンを購入。マックにサインを求めると、「ごめんなさーい、試合が始まった後はダメなんですよー」と、つれない返事が返ってきました。「頼むよーーー」とねだってみると、控えのキャッチャーらしき人が来て「ボールとペンを寄こせ」と言うのです。そしてマック鈴木選手からサインを貰って着てくれたのでした。また、テキサスにいる伊良部投手は最後の最後まで見ることはできませんでしたが、どっちのチームにも日本人がいるってところがスゴイ時代になったなーっと実感しました。
野球場でマック鈴木のサインを貰ってニッコリ
今回の旅はとにかく慌しくて疲れる旅でしたが、9日間バッチリ楽しめたように思います。世界のトップアスリート達もオフシーズン中に開催されたこの大会では、みんな和やかなムードでいつもとは違う顔を見せてくれました。それから、なんと言っても安との2人旅!きっと、もう2度とないことでしょう。と言うか、そう願っております。だって無理な注文が多いんだもんなーヤツ。(笑)
おわり